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2018.11.09

彬子女王殿下による特別講義が行われました

教育?研究

今年4月1日付けで本学大学院人文科学研究科客員教授に就任された彬子女王殿下による特別講義が、10月18日、世田谷キャンパスのメイプルセンチュリーホール1階大教室で行われ、「日本文化を未来に伝えるために」と題したご講義に、人文科学研究科および文学部の学生と教職員約220人が聴講しました。

ご講義に先立ち、佐藤圭一学長はあいさつで、彬子女王殿下の著書である『赤と青のガウン』を紹介し「オックスフォード大学での博士号取得までの経緯に心打たれた。飽くなき学問への情熱と真摯な姿勢が伝わってくる素晴らしい本。論文に大切なことはまず仮説を立てることだが、仮説を立てるまでの努力と研さんがいかに大切かを学んでほしい」と学生に呼びかけました。

彬子女王殿下はまずご自身の卒業論文の内容と、そのテーマを選んだきっかけに触れた後、オックスフォード大学マートン?コレッジでの留学生活を紹介し「外国では偏った日本のイメージがまかり通っている。折に触れ日本のことを説明するうちに自身が日本のことをいかに知らないかを思い知らされ、正しいイメージを伝えなければと思うに至った」と、日本美術に専攻を変更した経緯を説明されました。その後、浮世絵などの日本美術を例に挙げ、日本と西洋の美術品に対する考え方の違いを解説しながら、博士論文の研究内容を紹介されました。
次に、研究の一環で行なった大英博物館での仕事や、立命館大学衣笠総合研究機構での勤務を通して、失われていく日本文化に危機感を感じた当時を振り返り「博物館での展示や文化財保護法の範囲だけでは文化は継承されていかない。生活に根付いているのが日本文化であり、なぜ大切なのかがわかれば保護しなくても継承されていくもの。その土壌を整えることが大切」と日本文化を守るための活動として心游舎を設立された思いを述べられました。その後、心游舎の活動をエピソードや記録映像を交えてご紹介され「子どもの『なんで?』の力に勝るものはない。子どもたちの興味を摘み取らず、楽しかった思い出『記憶の種』を撒く作業を続けていきたい」と、ご自身の幼少期の体験が卒業論文のテーマに繋がったことなどを振り返りながら、今後のさらなる活動への意欲をのぞかせました。

ご講義終了後の質疑応答では、「日本の伝統文化の根底に一貫して流れているものは」との学生からの質問に、彬子女王殿下は「日本文化で一番大切なのは感謝の心ではないか」と述べられ、日本の伝統的な諸行事は神様への感謝の気持ちを表すものとして行われており、お辞儀やお中元なども相手への敬意を形にするものでヨーロッパではほとんど行われないと説明されました。

最後に学生が花束をお贈りし、大きな拍手のなか、特別講義が終了しました。

17日には彬子女王殿下に本学から国士舘大学名誉博士学位を贈呈しており、今後も客員教授として学生に対してご講義をいただく予定です。

ご講義をされる彬子女王殿下
熱心に耳を傾ける学生を前に
学生からの質問にも丁寧にお答えに
花束贈呈の様子