Episode_6

修了後も支え合える
仲間づくりの価値

インタビューの様子

法学研究科 法学専攻 教授 斉木 秀憲

斉木 秀憲Hidenori Saiki

法学研究科 法学専攻 教授※2024年取材当時

税理士の資格を取得するためには、会計学科目2科目、税法科目3科目の試験を受けて合格しなければならないが、法学研究科 斉木秀憲研究室で修士論文を作成して国税審議会の認定を受けられれば、税法科目が2科目免除となる。現在、研究室で学ぶ大学院生のほとんどは税理士志望であり、租税法を学んで修士論文を書くために入学している。大学院生の多くが社会人であるという環境で、勉強や論文執筆をどのようにして進めているのか。自助努力以外に何らかの支援は得られるのか。斉木研究室の「修士論文中間発表会」を通じて、在学生を取り囲むバックアップ体制の実態を紐解く。

教員と修了生による
強力なバックアップ体制

斉木秀憲教授が目指すのは “IT化の波に飲み込まれない”実戦力のある税理士の育成だ。学生には、学びを通して「法的三段論法」を養い、実践の場で役立つリーガルマインドを身につけてほしいと考えている。習得したリーガルマインドが免除論文の作成に反映され、ひいては税理士の使命である“納税義務の適正な実現”へとつながっていくからだ。しかし、大学院の2年間でリーガルマインドを身につけ、修士論文を書き上げることはそう簡単なことではない。仕事や家事?育児と並行しながら通う学生も多い。そのため、院生たちは皆、互いの事情に配慮しながら協力して勉学に取り組んでいる。さらに、法学研究科にはOB会があり、その支援を受けられるのも心強い点だ。研究室には頻繁にOB?OGが訪れ、学生の質問に応じたり、論文作成の相談?指導をおこなったりしている。“お互い様”という言葉が好きで、「一人より二人。その考えで協力し合えば、プラスアルファの力が生まれる」と語る斉木教授。その“斉木イズム”とも呼べる「共生の精神」を引き継いだ修了生たちによるバックアップ体制は、法学研究科に根づく文化であり、院生にとっては大きな魅力のひとつとなっている。

法学研究科

客観的なアドバイスを得て
論文をブラッシュアップ

2024年10月5日、法学研究科の修士論文中間発表会が開催された。多数の参加者に向けて研究内容や進捗状況を説明する中間発表会は、各自の論文を客観的に見つめ直すことのできる貴重な場だ。参加者から与えられるアドバイスや意見は、ゴールを明確にするマイルストーンとなる。会場は、世田谷キャンパス34号館の模擬法廷教室。午前10時に開始され、昼食?休憩をはさみながら約6時間半をかけて修士課程2年次所属の10名が自身の研究に関する中間報告を行った。1名ごとに質疑応答が行われ、発表者に向けて忌憚のないアドバイスや意見が送られる。発表会には、指導教員である斉木教授のほかに専門分野の異なる教授陣、6名の外部の専門家、そして修了生13名も出席し、多くの視点による横断的指導を受けられるのが特徴だ。“もっと分析や理解を深める必要がある”、“掲げるテーマと論点にズレが生じているのではないか”など、厳しい意見も出され、活発な議論が交わされた。発表の際にタイムキーパーを務めたのは、翌年に論文作成を控える1年生の面々だ。先輩の発表を間近に体感し、自身の研究テーマを考える上でも有意義な時間となっただろう。最後に、「未来の税理士像」をテーマに斉木教授の講話が行われた。社会の多様化や経済のグローバル化にともない税務処理も困難化することが推測されるため、税理士の存在意義はさらに増していくであろう。社会が複雑化し、新たなリスクが生まれ続ける中で納税義務の適正な実現を図るためには、租税法の専門家である税理士が納税者との信頼関係を築いた上で、租税法を正しく解釈適用していかなければならない。そのような主旨が語られ、中間発表会は終了した。

法学研究科

実践の場でこそ
真価を発揮する同窓の輪

中間発表会終了後は最寄り駅近くの飲食店に場所を移し、教授陣やOBとともに反省会が開かれた。斉木研究室の修了生と現役の院生は、日頃から顔を合わせる機会が多いため、ゼミの後に食事に出かける機会も多い。勉強に関する疑問点や論文の方向性、修了後の進路などをいつでも気兼ねなく相談できるというのは、在学生にとって非常に恵まれた環境だといえる。「学生生活や勉強、研究まで、様々なことを相談している」「論文の内容に関するアドバイスはもちろん、テーマを決める際のポイントや執筆の進め方まで教えてもらえる」「ゼミで行う判例評釈の作成に関してもアドバイスを受けられる」「授業で聞いたことをOBに確認し、より理解が深まった経験が何度もある」「懇親会で聞かせてもらう実体験にもとづくエピソードが参考になる」など、院生からは様々な意見が寄せられている。修了後もOB会でつながり、税理士として実践を積んでいく間も寄り添い続けてもらえるのだから、ますます心強い。修了生の中には先輩と後輩で税理士法人の設立計画を進めているケースも見られる。年齢やキャリアが違っても、同じココロザシをもつ「かけがえのない仲間」。その真価を実践の場で実感しているからこそ、OBの結束が強まるのかもしれない。

法学研究科

近年の税理士試験の合格率は15~20%。難易度の高い道への挑戦だからこそ、どこで、誰に学ぶかの選択は重要だ。少人数制で一人ひとりと向き合い、かつ「共生」の精神を重んじる斉木研究室であれば、苦難を成長の喜びに変えながら前進していけるのではないだろうか。法学研究科で学んでみたいと思う方は、ぜひ一度、授業見学に訪れてみてほしい。