斉木 秀憲教授
国士舘大学大学院
法学研究科
早稲田大学社会科学部卒、筑波大学院ビジネス科学研究科修士課程修了、税務大学校(総合教育部、研究部)?東京国税局(訟務官室、審理課、法人課税課、税務相談室)?東京国税不服審判所勤務、現在国士舘大学法学部教授。
研究テーマ:租税法及び税務訴訟の研究を通じて租税正義の実現について検証する。
早稲田大学社会科学部卒、筑波大学院ビジネス科学研究科修士課程修了、税務大学校(総合教育部、研究部)?東京国税局(訟務官室、審理課、法人課税課、税務相談室)?東京国税不服審判所勤務、現在国士舘大学法学部教授。
研究テーマ:租税法及び税務訴訟の研究を通じて租税正義の実現について検証する。
松本 敏朗客員教授
国士舘大学大学院
経済学研究科
東京都立大学経済学部卒業。国税庁(審理室長、調査課長等)、公益法人(専務理事)、税理士法人(代表社員)など。立教大学経済学部特任教授(09~13年度)、国士舘大学政経学部特任教授(18?22年度)
研究テーマ:租税法(制度と運用(税務行政を含む)、その変遷)
東京都立大学経済学部卒業。国税庁(審理室長、調査課長等)、公益法人(専務理事)、税理士法人(代表社員)など。立教大学経済学部特任教授(09~13年度)、国士舘大学政経学部特任教授(18?22年度)
研究テーマ:租税法(制度と運用(税務行政を含む)、その変遷)
宮原 裕一教授
国士舘大学大学院
経営学研究科
北九州大学(現、北九州市立大学)経済学部卒業。九州大学大学院経済学府修士課程修了?博士課程満期単位取得退学後、2009年修了、博士(経済学)。2006年より国士舘大学専任講師、その後、准教授を経て、教授(現職)。
研究テーマ:財務会計論。無形資産会計に関する研究(特に、研究開発費会計に関する研究)。
北九州大学(現、北九州市立大学)経済学部卒業。九州大学大学院経済学府修士課程修了?博士課程満期単位取得退学後、2009年修了、博士(経済学)。2006年より国士舘大学専任講師、その後、准教授を経て、教授(現職)。
研究テーマ:財務会計論。無形資産会計に関する研究(特に、研究開発費会計に関する研究)。
関口 博久教授
国士舘大学大学院
経済学研究科
早稲田大学政治経済学部卒業。専修大学大学院法学研究科公法学専攻修士課程修了、修士(法学)。国士舘大学大学院経済学研究科経済学専攻博士課程単位取得、博士(経済学)。国士舘大学政経学部専任講師、准教授。
研究テーマ:租税法、国際租税法(租税条約、国際的租税回避)、租税政策
早稲田大学政治経済学部卒業。専修大学大学院法学研究科公法学専攻修士課程修了、修士(法学)。国士舘大学大学院経済学研究科経済学専攻博士課程単位取得、博士(経済学)。国士舘大学政経学部専任講師、准教授。
研究テーマ:租税法、国際租税法(租税条約、国際的租税回避)、租税政策
AIの急激な進化にともない、さまざまな職業の大きな変化が予想される昨今。「税理士」も、その影響を大きく受けると言われることが多い。その中で、これからの税理士に求められる力とは何だろうか。その道を目指す人にとっては、どんな学びが必要なのか。
このようなテーマで教授たちが語り合ったのは、8月19日に開かれた国士舘大学大学院の入試説明会における特別対談企画。同大学院は税理士志望者の入学が多く、経済学研究科、経営学研究科、法学研究科という3つの研究科でこの領域を学ぶことができる。
これらの研究科に所属する教授たちは、未来の税理士に必要な力をどう捉え、大学院で何を教えていくのか。そして、国士舘大学大学院のメリットをどう感じているのか。登壇した経済学研究科の関口博久教授、松本敏朗客員教授、経営学研究科の宮原裕一教授、法学研究科の斉木秀憲教授の言葉を載せていく。
AIは敵か味方か。
「むしろ税理士の使命は増していく」
AIをはじめ、税理士を取り巻く環境は今後変化していくと考えられます。皆さんはこれからの税理士に求められる力をどう捉えていますか。
斉木秀憲氏(以下敬称略):私は、ITやAI化が、税理士の使命に基づく租税法の専門家、法律家としての税理士のニーズを、ますます、高めるものと考えます。
これらによる効率化という面がデフォルメされますが、一方で、新たな価値の創造という面があり、新たな商品やサービスの開発、提供がされ、新たな収益、所得や財産が創造されます。電子取引や暗号資産など複雑化する経済的取引に対して、租税法を解釈適用して、租税法に規定された納税義務の適正な実現を図るという税理士の使命に基づく租税法の専門家、法律家としての税理士のニーズは、ますます、高まるものと考えます。
申告書作成屋になるな、租税法の専門家、法律家としての自負を持てる税理士を目指してほしいという想いで指導しています。
松本敏朗氏(以下敬称略):税理士が行う業務は、税理士法で「税務代理、税務書類の作成、税務相談」と規定されています。業務自体は変わらないとしても、その業務をどのように遂行していくのかは社会経済の動きにつれ変化していくでしょう。今後AIがその業務遂行にどのような影響を及ぼすかについて、現時点で見通すことは困難ですが、例えば税務調査の現場でAIロボット同士が向き合うということはあり得るでしょうか。
税理士として心がけることは、時代につれ変化?変質していくであろう税理士業務を的確に遂行していくことができるだけの能力を涵養していくこと、それはAIを指揮する能力の涵養と言ってもいいでしょう。そして、そのための基礎固めをするのが大学院の2年間だと思います。
宮原裕一氏(以下敬称略):AIをはじめ情報処理技術の発展により、税理士法で規定されている税務書類の作成については、膨大な知識データをもち、迅速かつ正確な計算力をもつAIに対し、税理士の有する知識や計算力は優位性をもてなくなっています。そこで今後は、税務相談において税理士の使命は増していくものと考えています。
税理士は経営改善支援の担い手としての役割が期待されていますが、AIが情報分析して判断した答えが一番いいとは限りません。売上や利益を最優先する経営者がいれば、従業員や取引相手を大切にする経営者もいます。あらゆる答えのなかから経営者の納得する解を模索する「思考プロセス」を身につけることが必要で、これを涵養するのが大学院での2年間であると思っています。
関口博久氏(以下敬称略):AIを始めとした今後も続くテクノロジーによる環境変化に税理士が対応することは、当然に必要になると考えています。また、税理士を取り巻く環境変化として、引き続き経済のグローバル化は進むと思います。ゆえに、グローバル化への対応として国際租税法の知識も大切になると思います。この点、現状において理論的にも国際租税法を学べる場所は、大学院以外あまり無いかと思います。税理士の基本を踏まえて、これから必要になるその知識を2年間の大学院生活で身につけてほしいと思います。
テクノロジーの進化は、取引や税のやり取りを複雑にする。だからこそ税理士の使命は重くなり、また複雑なものにこそAIを活用することが求められていく。環境や方法論は変わっても税理士の本質は普遍であり、この変化を前向きに捉えることが重要だろう。
税理士としての「強み」を選べる、
国士舘大学大学院の学び
未来の税理士像をうかがった上で、今回ご登壇いただいている先生方の研究科やゼミでは、どのような学びを得られるのでしょうか。
関口:経済学研究科は3つのコースがあり、そのうち税理士志望者の多くが「租税法?会計コース」に来られます。このコースには、国内税法、地方税法、国際租税法、財務会計という4分野の専任教員がおります。また、そのような税法関係以外の分野も充実しているのが特徴です。
私の専門は国際租税法ですが、国際租税法の前提は国内法ですから、国内法の基礎から租税条約も含めた国際租税法へと順序立てて学んでいただきます。
松本:私は、所得税法、法人税法を中心とした「租税法研究」と「租税判例研究」を担当しています。図解版テキストを使い、また条文を読み取りながら、租税法の基礎を確認します。そして関連判例や重要判例を読み込んで解析力と応用力を養っていきます。皆さんにとって最大の関心事項である修士論文の作成については、2年間かけて取り組むことになります。皆さんの発意を最大限尊重しながら、一人一人に応じた指導をしていきます。
特に修論作成の全工程で得られた経験は、税理士業務遂行の随所で活かされることになるでしょう。
宮原:経営学研究科では、入学時の履修科目決定から修士論文指導まで、院生一人ひとりを指導教員が直接サポートしています。これは、国士舘大学の理念にある「学生一人ひとりと向き合う少人数教育」の実践です。また、税理士志願者向けに、財務会計論、原価計算論、制度会計論、会計史という4分野の専任教員がおり、現在のところ会計科目の免除不認定の話は聞いていません。
私のゼミでは、院生のほとんどが経営?商学系の出身者ではないため、1年次の演習でも演習形式の講義を取り入れ、会計学における論点を学んでいくのが特徴です。社会人として抱えていた会計処理の疑問が解消されたという声を聞くことがあり、大学院での2年間は将来の税理士業務の礎になることでしょう。
斉木:法的な判断を表明する能力、リーガルマインドを習得できることです。
課税の対象となる経済取引は、一次的には私法等によって規律されているため、租税法の解釈適用をするためには、その前提となる私法等の解釈適用の検討が必要な場合が多くあります。そこで、法学研究科では、租税法担当の教員だけでなく、憲法、民法、行政法など他の法学の教員を含めて全員で、少人数ゼミ方式により、院生がリーガルマインドを身に付け、法の解釈論文である免除論文の作成ができるよう、協力体制を採っています。
同じ税理士でも、バックグラウンドの知識でそれぞれの強みは異なってくる。国士舘大学大学院は、経済、経営、法というアプローチから税理士を目指すことができ、自分がどんな強みを持つべきか、上記の中から選択できるといえるだろう。
国士舘で税理士を目指すメリット。
研究科を横断した学びも
税理士を目指す人にとって、国士舘大学大学院の学びで得られるもの、メリットは何でしょうか。
松本:大学院というアカデミックな場で2年間学ぶことのメリットは先程述べたので、ここでは別の面に触れたいと思います。それは、修士論文の作成による税理士試験科目の一部免除により、税理士資格取得の期待値が格段にアップするということです。税法3科目合格までには、税法の改正、あるいは試験当日の思わぬトラブルなど、不確実性要素を乗り越える必要があります。一方、修士論文の作成にも多大の努力が必要です。しかし、何をどう努力すればいいかは自明です。仮に何らかの障害があるとしても時間があるのでそのリスクを分散して乗り越えることは可能です。どうしても最後の1科目が受からないので大学院を受けた、という声がこのことを裏付けているでしょう。
斉木:税理士になってから議論できる仲間を取得できることもメリットと考えます。
院生の多くは、社会人であり、仕事や家庭の都合を踏まえて、協力しあいながら大学院生活を送っています。また、法学研究科では、OB会があり、税制改正や判例等の議論のほか、現役生の修論支援も行っていて、現役生とOBとの繋がりもあります。最近は、税理士への損害賠償請求事件なども散見され、このような繋がりは、今後さらに重要になっていくものと考えます。是非、ゼミ授業見学に来てみて、体験していただければと思います。
最近、税理士への転職を望まれる方など法学研究科のあとに会計科目免除のため、経営学研究科への進学希望者がみられます。そこで、法学研究科修了予定者の経営学研究科への特別推薦という横断的な対応をしています。
宮原:学内の他研究科への入学は、入学金が全額免除、施設整備費が半額免除など、経済的メリットがあります。また、新宿?渋谷から30分以内という立地的メリットもあります。
経済?経営?法学研究科の垣根を超えた入学は年々増え続けており、オール国士舘で学べるのです。
社会人が税理士を目指す上で、大きな壁になるのが税理士試験だ。仕事と並行して勉強時間を捻出するのは簡単ではなく、同じ時間で修士論文を書き、科目免除を狙う考え方もある。何より、その過程では試験勉強にはない「仲間」を得ることもできるかもしれない。
社会人が通うからこそ
「院生同士が引き上げる授業」を行う
大学院で学ぶ人の中には、社会人も多くいらっしゃいます。そういった方に向けてアドバイスをいただけますか。
関口:1年間は52週ありますが、そのうち大学院の授業が行われるのは基本的に30週です。とりわけ社会人である院生の方には「残り22週とのバランスを考えながら学んでください」と伝えています。そして何より大切なのは、教員と院生のミスマッチを生まないことだと考えます。院生それぞれにお考えがあると思いますし、それに見合う教員も揃っています。やりたい勉強、指導してほしい内容に合わせた教員を見つけてほしいと思います。
宮原:大学院では、仕事や家庭の場から離れ、税理士として何を為したいのかを再考する良い機会となります。あなたの「夢をあきらめない」気持ちを大切にしてください。私たちは、全力でサポートします。
松本:社会人コースは、多様?多彩な人が一緒に学ぶので、授業も工夫が必要です。知識経験豊富な人には、授業を復習の機会として利用する中で、時にはチューター役を引き受けてもらうなどしています。また、卒論その他に取り組んだことのない人には、最初に諸先達の論文を読んで、論文はこんなふうに書くのか、ということを実感してもらっています。
もう一点、職場や家庭との両立をサポートする観点から、予習にあまり時間を取らずに授業時間内で集中してレポートを作り上げる方式も取り入れています。仕事が忙しい人も、知識経験がまだ不十分だと思っている人も安心して学びに来てください。
斉木:実際、社会人として、皆さんと同じような状況、境遇の院生や院を修了したOBが大勢いるということです。「税理士になる」という強い覚悟を持ち、仕事と家庭に並ぶ生活基盤として、大学院を考えていただきたい。税理士という資格は、むこうからやってきません。税理士になる覚悟をもって、まず、一歩踏み出して、手に入れてください。
働きながら税理士の資格を取得するのは簡単ではない。だからこそ、大学院で誰に学び、またその先生がどれだけ深く向き合ってくれるかが重要になる。広い分野のエキスパートがそろい、少人数教育を実践する国士舘大学大学院の強みはそこにある。たとえ苦労をともなっても、それ以上の財産を与えてくれる学び舎になるかもしれない。