「おはようございます」というと、「おはようございまーす!」と、元気な声が返ってくる。今日は、私たち体育学部「こどもスポーツ教育学科」の学生が開く「ミニ運動会」の日だ。お声をかけさせていただいた近隣の小学校から、元気なこどもたちがいっぱい集まってきてくれた。
運動会の開始は午前10時。玉入れや障害物競走など、会場のサッカーグラウンドで、こどもといっしょに走りまわり、体を動かした。途中で雲行きがあやしくなり、にわか雨が降ってきた。雨天の場合は体育館でやると決めていたので、慌てずにこどもたちを誘導し、続きの競技をみんなで楽しんだ。球技やしっぽとりゲーム、アルティメットと呼ばれるフリスビーを使った新しい競技に、こどもたちは夢中になって目を輝かせていた。そして、あっという間に楽しい時間がすぎ、無事にミニ運動会を終わらせることができた。
「こどもスポーツ教育学科は何を学ぶところ?」と、よく聞かれる。その答えは、この学科の名前にすべて入っている。つまり、「こどもが好きで、スポーツが好きで、先生になりたい人」が学ぶ場所なのだ。この学科を卒業すると、小学校の先生の免許はもちろん、中学校や高等学校の保健体育の先生の免許も取得できる。また、柔道や剣道が必修科目に入っているのも、この学科のユニークなところだ。つまり、「体育?スポーツが得意な先生を育成する」これがこの学科の目的となっている。
最近の学校では、いじめや非行、不登校などが問題になっている。心の教育の重要性が叫ばれるなか、先生の果たす役割はますます大きくなってきた。そして、こどもの心の教育や、人間形成を考えたとき、スポーツや武道が果たせる役割はとても大きい。がんばる気持ち、負けない心、がまん、努力、思いやり、チームワークなど、スポーツは人の心をのびやかに育てる。もちろん勉強は必要だけど、あそびや運動を通してしか教えられないこともある。だから、私たちはここで学び、こどもといっしょになって、遊んだり、学んだりする教師となることをめざしている。
とはいっても、先生になるための勉強はたいへんだ。国語、算数、社会、理科の他に、音楽や図工も学ばなくてはならない。スポーツは得意だけど、正直いって、ピアノは触ったこともなかった。ドレミから教わって、一所懸命練習し、いまはなんとかバイエルが弾けるようになった。こうして勉強してみると、小学校の先生はすごかったんだなと、いまさらながらに感心する。
「がんばって、いい先生になりたい」そんな有志が集まって、授業とは別の自主勉強会が始まった。会の名前は「やる気あるん会」。ちょっと変わった名前だけど、「やる気のないやつは来なくていい」という気持ちの現れだ。この勉強会には、先生方もボランティアで参加してくださっている。この中から、今回の「ミニ運動会をやろう」という話が誕生した。企画も、運営も、すべて学生の手によって実施される運動会だ。
しかし、いざ始めてみると、とてつもなく大変なことが分かってきた。「こどもをどうやって集める?
種目は何にする? 怪我をしたらどうするの?」次々と生まれる問題を、みんなで額を寄せ合い、一つひとつ解決していった。玉入れや障害物競走、リレーのバトンなどの道具類も、一から買い揃えなくてはならなかった。会場を飾る看板や花も手づくりした。本番前にリハーサルを何度も行い、足りない道具を揃えたり、段取りを改善していった。
学生が、みんなで力を合わせて実現した「ミニ運動会」。これを開催できたことは、本当にいい経験になった。評価すべきところは評価し、反省すべきところは反省し、来年につなげて行きたいと思っている。
いい先生になるためには、まず、自分たちがいい人間にならなくてはならないと思う。こどもは、大人の背中を見て育つから。このユニークな「こどもスポーツ教育学科」で、私たちは自分自身を磨きあげ、いつの日か、スポーツを通してこどもたちの未来を広げられるような、元気いっぱいの先生になりたいと思う。
- 2年生 石川 沙樹 (埼玉県/県立春日部女子高等学校)
- 父が教師をやっていて、家でいろいろ話を聞く機会がありました。父を尊敬しているし、通った学校もいい先生ばかりだったので、自分も教師を志すようになりました。スポーツは新体操をやっていました。私がこの学科を選んだのは、小学校の教員免許だけじゃなく、中高の体育の教員免許も取れるからです。4年間じっくり学んだ中で、自分が小中高のどの先生に向いているかを見極めたいと思っています。ミニ運動会では、副実行委員長を担当しました。将来は、やさしさ、厳しさ、楽しさを、スポーツを通して、こどもたちに教えたいと思います。
- 2年生 岩見 陽平 (茨木県/岩瀬日本大学高等学校)
- 先生になろうと思ったいちばんの大きな理由は、父親が教師だからです。教師は人の人生に大きく影響をもたらす職業。とくに小学校は人間がいちばん成長する時期なので、そこに魅力を感じます。こどもと接する機会を多く持ちたいので、教育委員会のボランティアに参加して、小学校の体育の授業をお手伝いしています。今回のミニ運動会では、会計と用具を担当しました。実際にリハーサルをやってみて、これも必要、あれも必要ということが分かり、やりくりするのがたいへんでした。高校までは、水泳と野球をやっていました。その人の人生でいちばん心に残るような、そんな先生になりたいと思っています。
- 2年生 門脇 拓也 (高知県/県立高知南高等学校)
- 先生になりたいと思ったきっかけは、小学校の担任の先生への憧れでした。誰に対しても厳しく、そしてやさしく、いいことをしたときはいっしょに喜んでくれるような理想の先生でしたに。そんな先生になりたくて、この学科で学ぶようになりました。高校の時は、陸上競技をやっていて、インターハイにも出させてもらいました。ミニ運動会では、書記と保健係を務めました。保健の先生と打ち合わせをし、どんな準備が必要か、怪我をした場合はどうするかなどを詰めていきました。将来は、一人ひとりに対して、深い愛情を持って接することのできる先生になりたいと思っています。
- 2年生 斎藤 佑紀 (埼玉県/県立浦和北高等学校)
- 小学校の先生がとってもいい先生で、私もそんな先生になりたいと思うようになりました。こどもは大好きです。塾でアルバイトをしていますが、「先生、先生」っていって、心を開いてくれるのが嬉しいです。私は体育が好きですが、体育学科では中学と高校の教員免許しか取れないので、小学校の教員免許も取得できるこどもスポーツ教育学科を選びました。中学校で剣道、高校では野球部のマネージャーをやりました。大学でも剣道の授業はありますが、それとは別に自主的に学生が集まって先生にご指導いただいています。いま二段ですが、三段めざしてがんばっているところです。
- 2年生 吉田 義晴 (東京都/都立雪谷高等学校)
- 学生時代にやっていたスポーツは、水泳と器械体操です。専門学校を出てから、いったんは作曲と編曲の仕事をやっていました。でも、ボランティアで水泳のコーチをしているうちに、こどものことが可愛く思えてきたんです。いろんなことに一喜一憂して、泣いたり笑ったりする純粋な顔を見ているうちに、まっすぐな人間に育ってほしいと思う気持ちが強くなりました。それで先生になりたいと考え、この学科に入りました。今回の運動会では、実行委員長をやらせていただきました。将来は、クラスの子全員にきちんと向き合えるような先生になりたいと思います。